昭和の女流作家であり、着物デザイナーでもあった宇野千代さん(1897-1996)は、エッセイの中で次のように断罪している。
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「お洒落をしない人間は、泥棒よりも醜いと思う。」
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12月の宮崎にしては珍しく氷点下近くまで冷え込んだ夕方、僕はロングコートの襟を立てて、体温を奪おうとする北風に必死に抗っていた。「この寒さで『南国』と名乗るなんて、ピーターパンが名刺持って成人式に訪れるくらい詐欺だ」と恨み事を呟きながら、大学構内を急ぎ足で歩く。
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講堂の横を通りかかった時、講堂内の会議室に異様な光景に出くわした。
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取材魂に火がついた僕は、この集団を取材することにした。
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彼らのチーム名は『Fashion Laboratory』。ファッションに興味のある学生が集まり、ファッションの様々な方向性や構成要素を研究?分析し、議論を深め、ファッションを通じて人間関係を深化させることを目的に設立されたサークルである。
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「最終目標はオリジナルファッション雑誌を創刊することで、現在はその準備としてスナップ写真を撮りためています」と部長の大田君は真剣な眼差しで語る。なるほど、ヨーロピアンなパーマネントヘアーに細身のピーコートが良く似合っている。ファッショナブルだ。
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すると、突然打ち合わせ中の会議室にテレビカメラが乱入。何事だ!?
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何事なんだー
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実はFashion Laboratoryの皆さんも知らされていなかったのですが、この日はMRT宮崎放送の「わけもん!」というテレビ番組の「大変身したい女の子募集!」のコーナーに、サークルメンバーの1人である佐藤さん(1年生)が出演するということで、プロのスタイリストと美容師にプロデュースされて大変身を遂げた佐藤さんと、それを見て驚くサークルメンバーを撮影するために、テレビでおなじみの政所リポーターを筆頭に取材クルーが訪れたのでした。変身済みの佐藤さんは別室で待機中とのことで、まずは普段の佐藤さんのファッションについて取材を受けるメンバーたち。突然のテレビカメラに問答無用のアドリブトークを強いられて、なかなか苦しそうです。
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そしていよいよ変身後の佐藤さんと御対面。佐藤さん自身も変身中は鏡を見ていないので、初めて変身後の自分を目の当たりに。「可愛い!」「すごい!」「ふわふわ!」などの言葉が飛び交います。普段学内で見かける佐藤さんのファッションは、ビビッドな色使いやパンキッシュでキュートなイメージが強かったのですが、変身後は「仕事のできるOLのアフター5」的な大人びた雰囲気で驚きです。千鳥格子柄の襟を立てたロングコートがNYの摩天楼の下を闊歩するシティーガールを想起させます。
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この日の佐藤さんのヘアスタイル、メイク、ファッションをプロデュースしたのが、『宮崎美少女図鑑』のアートディレクターを務める川越和彦さん。
「髪型もメイクも服装も、自分で気に入っているパーツを前面に押し出し、気に入っていないパーツを目立ちにくくするのが基本」と、その極意を話されます。髪型もボリュームゾーンの位置の変化で若く見えたり老けて見えたりするそうで、三十路をまたいだばかりの学務課コバヤシは全力でメモを取りたい気分でした。また、この日の川越さんのファッションにも、随所に様々な工夫が施されているそうです。うーん、奥が深いぜ、ファッション。
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川越さんはご自身を「今までにいないタイプのスタイリスト」と位置づけており、ご自身が手掛ける雑誌やファッションと、宮崎県内の大学生とのタイアップによって、東京追従型ではない宮崎独特の若者文化を醸成するきっかけを作りたいと話しています。「かつてボリュームのあるトップスとスキニーパンツの組み合わせが爆発的に流行しましたが、あれは実は福岡から全国に広がったんです。ファッションの流行が都市圏から地方へと一方通行で伝播するわけではありません。宮崎という地方都市に暮らしていても、少しの工夫と機会があれば毎日が楽しくなるようなファッションやヘアスタイルを実践できますし、オリジナリティの高いものであれば県外へと発信されていくでしょう」 ファッションというアートを武器とした地域活性化の可能性を、ビシバシ感じましたし、そのような姿勢が評価されて、「宮崎県承認企業 経営革新企業」として県知事からの承認も受けているそうです。ちなみに、川越さんはFashion Laboratory部長の大田君に、ファッション誌の作り方のノウハウを教えてくださっています。 本学の学生には、このような地域の実業家やローカルメディアとのつながりから、たくさんのことを学びとってもらいたいです。
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最後に皆で記念写真。
この日の収録内容は、12月25日(土)夕方4時からMRTでオンエアされますので、是非是非ご覧くださいませ!!
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「お洒落をしない人間は、泥棒よりも醜いと思う。」
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「泥棒とはあんまりじゃないか」と反発しながらも、ここ1年で買った服と言えば仕事用のカッターシャツくらいの学務課コバヤシが、来年の目標は「ティーンエイジャーのようにお洒落熱再燃」にしようと決意を固めた、寒い寒い冬の夜でした。
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以上!